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POSデータのモデルとその活用

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現状の課題

POS(Point of Sales)データがもたらす情報は、以下に挙げるように多岐に渡る。POSデータを有効に活用することができれば、品揃え、価格、販促、棚割などの最適化に大いに寄与するであろうことは容易に想定できる。しかし乍ら、活用方法が解らない、活用の為のツールが用意されていない、活用のためのツールが使いにくい、活用の効果が期待できない等々理由はさまざまではあるが、必ずしも有効活用されていないというのが現状ではないだろうか。

本稿では、まず、POSデータの詳細度に関する3モデルを紹介し、それぞれからどのような情報が得られ、どのような活用ができるのかを整理してみたい。

何が分かるか 何によって分かるか
Why:なぜ 天候、売場、棚番、販促
(チラシ、クーポン、デジタルサイネージ・・・)
What:何を 商品(部門、カテゴリー、サブカテゴリー、セグメント、SKU)
Who:誰が キャッシャー/販売員
Whom:誰に 顧客(性別、年齢、住所、家族構成、職業・・・)
When:いつ 年月日、曜日、時刻
Where:どこで 企業、店舗(無店舗)
How:どのように 支払方法(現金、プリペイド、デビット、クレジット)
媒体(店頭、EC)
How many:どのくらい 数量(重量)
How much:いくらで 価格(売価、値引、割引)

POSデータのモデル

POS情報の活用におけるPOSデータとは、前述のすべての情報を含むPOS取引データだけではない。大は小を兼ねるから、利用効果においてはPOS取引データが最優位ではあるが、データ量の多寡によって情報処理コストは左右されるので、目的に応じた詳細度が求められる。

POSデータの詳細度によるモデルとして、商品サマリーデータ、ジャーナルデータ、ID-POSデータの3モデルが挙げられる。一般的な商品サマリーデータは、日別、店舗別、SKU(Stock Keeping Unit)別の売上点数および金額である。これに対して、ジャーナルデータは合算されることのない取引明細データであり、ID-POSデータはジャーナルデータに顧客の識別データが付加された取引明細データである。これらがもたらす情報は以下の通りである。

商品
サマリー
データ
ジャーナル
データ
ID-POS
データ
Why:なぜ*1 ×
What:何を
Who:誰が ×
Whom:誰に × ×
When:いつ*2
Where:どこで
How:どのように ×
How many:どのくらい
How much:いくらで*3

*1 POSデータから、何故買ったかの回答を得ることはできないが、POS取引データとコーザルデータがあれば、相対的に仮説を立て易い。

*2 いつ買ったかは、商品サマリーデータでは、日付・曜日までは分かるが、時刻(時間帯)までは分からない。

*3 いくらで買ったかは、商品サマリーデータでは一日の売上が合算されてしまうので、個々の売価は分からない。

商品サマリーデータ

商品サマリーデータから得られる情報は、店舗別/日別/SKU別の売上点数、売上点数PI値(Purchase Index、購買指数)、売上平均単価、売上金額および売上金額PI値である。

商品サマリーデータによって、対象比較分析とABC分析ができる。

対象比較分析は、時系列推移、前年、前月および前週対比、日別他店対比、更に市場データが得られるのであれば、自社データと市場データの同様の比較である。売上をカテゴリー別、サブカテゴリー別、セグメント別、単品別とドリルダウンさせていく必要がある。

ABC分析は、カテゴリーあるいはサブカテゴリー内の売れ筋商品、死筋商品の把握である。

ジャーナルデータ

ジャーナルデータから得られる情報は、商品サマリーデータから得られる情報に加えて、買物客のチェックアウト単位の取引データであるから、同一取引内の商品データ同士の組み合わせ及び同一取引内の商品データとそれ以外のデータとの組み合わせである。

前者の情報は、同時購買商品の把握に基づく、クロス・マーチャンダイジングへの活用ができる。また、後者の情報は、商品サマリーデータでは得られなかった曜日別時間帯別客数、商品カテゴリー別(サブカテゴリー別、セグメント別、単品別)の曜日別時間帯別売上点数を把握することができる。

更に、ジャーナルデータとコーザルデータ、即ちチラシ、棚割、陳列などの店内要因および曜日、天気、気温などの店外要因を組み合わせることによって、販促企画の仮説検証を行うことができる。

ID-POSデータ

ID-POSデータの活用に当たっては、一般的に全POSデータの70%以上がID-POSデータである必要があると言われている。ID-POSデータは、買物客のチェックアウト単位の取引明細データである点においてはジャーナルデータと同様であるが、同一顧客の識別データが付加されることによって、以下の3点においてジャーナルデータとの違いがある。

まず、ジャーナルデータでは捉えられない同一顧客のリピート購買を掴むことができる。即ち、同一買物客が特定の商品を、初めて買ったか、繰り返し買っているか、いつから買わなくなったか、誰が買わないか、という情報を提供することができる。

また、ジャーナルデータでは同時購買商品を捉えることができるが、ID-POSデータでは期間内の併買商品を捉えることができる。スーパーマーケットでの買物は、ほぼすべての世帯構成で、週に2~3回の頻度、1度に2~3日分の食材購入が多数派である。従って、個別の買物が前回買物時の買い忘れなど本来同時購買とされたものを含むものであることは否めない。クロス・マーチャンダイジングの展開において、併買商品の判断は、同時購買に限定するのではなく、ID-POSデータによって得られる同一買物客の期間内購買を対象とする方がより適切である。

そして、これは情報としての価値は必ずしも高くはないが、ジャーナルデータで捉えることのできたチェックアウト回数ではなく本来の顧客数を捉えることができる。

ID-POSデータの活用

ID-POSデータの活用に当たっては、顧客属性、購買頻度、購買金額などに基づく顧客セグメントを設定し、マーチャンダイジングに反映させていく方式と顧客IDに基づくOne to One Marketingを展開していく方式が考えられる。勿論、これらは二者択一ではなく併存可能である。

マーチャンダイジングへの活用では、デモクラフィック・データ(性別、年齢、世帯構成など)と商品カテゴリー(サブカテゴリー、セグメント、単品)によるクロスカテゴリー分析に基づくマーチャンダイジング展開を行う。

One to One Marketingでは、連絡先情報として、氏名、メールアドレスなどが必要であるが、ポイント・カードなど入会時の顧客のデモクラフィック・データよりも顧客の買物行動に基づく購買情報によって顧客プロファイリングを行っていくことが重要である。蓄積された購買情報に基づいて、スマートフォンあるいは双方向デジタルサイネージによるチラシ、クーポンの配布、お薦め商品リコメンドなどを展開することができる。

以上

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