コラム

ロイヤルティ・マーケティングのスーパーマーケットへの適用

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ロイヤルティ・マーケティング(Loyalty marketing)

ロイヤルティとは、消費者が特定の企業(店舗)やその製品(商品)・サービスに対して抱く愛着やこだわりなどの好意的な感情のことである。ロイヤルティ・マーケティングとは、この好意的な感情に基づくマーケティング手法である。ロイヤルティ・マーケティングは、個々の製品(商品)・サービスの売上・利益の最大化ではなく、個々の顧客の売上の最大化を目的とする。

ロイヤルティ・マーケティングは、新聞広告やテレビ・コマーシャルに代表されるマス・マーケティングに対して、個々の顧客を客体とするCRM(Customer Relation Management)の小売業版、あるいはOne to One Marketingの一種と言って良い。CRMの目的は、顧客との関係づくりという考え方に基づく、優良顧客の維持創造、守りたい顧客とのカスタマイズされたコミュニケーションに基づく顧客ニーズの実現にある。

ロイヤルティ・マーケティングは、顧客にとっての商品・サービスの価値は、価格、機能 、 品質に加えて顧客体験(カスタマー・エクスペリエンス)にあるという認識に基づいて、顧客体験を最適化し、顧客との繋がりを高めて顧客ロイヤリティを上げる。そして、顧客に対するインセンティブを、値引、割引などの金銭的還元(ハード・ベネフィット)だけと捉えるのではなく、リコメンド、イベント招待などの非金銭的特権的還元(ソフト・ベネフィット)を重視するものである。

なぜ、いま、ロイヤルティ・マーケティングか

1981年5月にリリースされたアメリカン航空のマイレージ・サービスがロイヤルティ・マーケティングの起源である。現在、我が国のスーパーマーケットにおいては、ポイントカードは特別のプロモーションではなく当たり前のマーケティング手法となっているが、所謂ポイントカード・プログラムとロイヤルティ・マーケティングの違いは大きい。

ポイント・プログラムは、一見客も常連客も一律にレシート単位の購買金額に応じてポイントが付与される事実上の割引施策である。ここにおいては、割引やポイント還元が常態化し、更にポイントⅩ倍等の施策により、インセンティブの価値が低下する。また、他社との差異化が困難となり、価格競争に陥る。

これに対して、ロイヤルティ・プログラムは、購買を継続、拡大することによって付与する特典が異なり、顧客のランクに応じてそれぞれの顧客体験を演出する。更に、ランクアップあるいはランクダウンの際に顧客とのコミュニケーション機会を創出するなど、誤解を恐れずに一言で言えば、優良顧客の優遇がその性格である。

少子高齢化の進展により、スーパーマーケットの総需要は、将来に向けて確実に低減する。しかも、小売業は、顧客にとって離脱が容易で他店舗の代替性が高い。また、顧客にリピートを促すコストは、新規顧客を獲得するよりもはるかに低い。この様な経営環境下において、既存の顧客を維持確保し、より自店舗へのロイヤルティを高める施策としてロイヤルティ・プログラムは、いま改めて取り挙げる価値があるものと思われる。

ロイヤルティ・プログラムの策定

ロイヤルティ・プログラムの策定のステップは、ロイヤルティ戦略の立案、プログラム・デザイン、構築システム、プログラム運用および効果検証の五つである。

ロイヤルティ戦略の立案とは、どの様な顧客を、どの程度のコストをかけて、どれだけ獲得するかという最重要基本命題である。プログラム・デザインとは、会員種別を何ランク設けるか、その顧客ランクの閾値の条件をどうするか、どのようにしてどのような顧客情報を収集するか、そしてこれらに要する投資に対してどれだけの効果が見込めるかを策定することである。構築システムとは、会員情報管理、特典付与および特典管理に関わるシステムのグランド・デザインである。プログラム運用とはロイヤルティ・プログラム稼働時の顧客情報収集、会員種別、特典付与などに関わる見直しを含めた運用体制を設定することである。最後の効果検証は、ロイヤルティ・プログラムの評価項目と評価方法である。例えば、財務効果の分析、特典が顧客に評価されているか、特典が逆に客単価を下げていないか、もっとローコストにできる特典はないか、などである。

ロイヤルティ・プログラムの設計の留意点

ロイヤルティ・プログラムの設計における留意点は、顧客購買行動をどのように把握するか、誰がロイヤルカスタマーか、そして誰に何を提供するのかの三つである。

顧客購買行動をいかにして把握するのかということについては、入会時のデモクラフック・データに依存することなく、顧客の買物行動データに基づくプロファイリングが肝要である。また、買物行動データのリアルタイム処理は必須条件である。例えば、あといくら買えば、ロイヤルティ・プログラムの上位ランクに到達するのかを即時に知ることができないしくみでは、インセンティブが有効な働きかけにならないからである。

誰がロイヤルカスタマーかということについては、ロイヤルカスタマーの選別における基準、基準値を適用する期間および顧客ランクの閾値を設定しなければならない。基準は一般的には、購買金額または来店頻度あるいはその両者である。基準値を適用する期間は、商品・サービスの一般的な購買頻度に基づいて設定される必要がある。また、顧客ランクの閾値は、平均購買額から最高購買額の間の到達可能な希望購買額が求められる。

誰に何を提供するのかということについては、安直にクーポンなど金銭的還元に留まるのではなく、原価の低い顧客に喜ばれるプレゼント、商品のモノだけでなくコトを追求する必要がある。

ロイヤルティ・マーケティングで何が変わるか

適切なロイヤルティ・プログラムによるロイヤルティ・マーケティングは、顧客の囲い込みに効果をもたらす。ロイヤルティ・プログラムよって選別された顧客は、他の買物客と比較して優越的待遇を受けることによって、店舗のファンとなり来店頻度が高まり売上の増大をもたらす。そして、店舗のファンとなることによって、店舗にとって有益な要望あるいは不満を提示してもらうことできる。また、顧客ランクに応じた特典を付与することによって、休眠顧客、離反顧客を最小化することができる。更に、顧客の行動からも、顧客が何を求めているか、どこに不満を持っているかが見えてくる。

スーパーマーケットにおけるロイヤルティ・プログラムの特典案

スーパーマーケットにおけるロイヤルティ・プログラムの特典としては、ポイント特別付与(率)が挙げられる。これは、特典を付与してしまえばその特典の利用による消込が要らないことから、既存のポイントカード・システムに小規模な改修を加えることによって、直ぐにでも実施できる。

他の買物客と比較して優越的待遇という点を明示するには、異なったデザインのポイントカードを発行することも一案である。

特典は、例えば、コーヒー・サービス(Ⅹ杯飲んだら1杯無料)というような販売商品によるもの、宅配サービス無料(月間Ⅹ回)、優先駐車場、優先チェックアウトなど提供サービスによるもの、イベントへの(抽選当選者)招待などモノではなくコトにするものなどが考えられる。

以上

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