コラム

5G(第五世代移動通信システム)

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5G(ファイブ・ジー 5th Generation)

5Gは、第五世代移動通信システムの略称である。第五世代移動通信システムは、次表に示す通り、第一世代移動通信システムからの発展形態であり、現在安定稼働期にある第四世代移動通信システムの後継と目されている。第5世代移動通信システムの主要な特徴は、高速・大容量、低遅延および多数同時接続の三つにあると言われている。

高速・大容量については、4Gの100倍、10Gbpsとされており、換算すると2時間の映画が3秒でダウンロードできるという超高速が実現する。低遅延については、4Gの10分の1、1000分の1秒とされており、換算すると時速60kmで走行する自動車で制動後17㎝の走行が1.7㎝の走行に留まるものである。また、多数同時接続については、4Gの10倍、1㎢当たり100万台の接続が可能であり、あらゆる設備、機器のIoT化が実現できる。

5Gは、2017年2月にMWC(Mobile World Congress)において、標準仕様の早期策定に関する共同提案が合意され、2018年6月には、二つの方式の標準仕様が確定している。これらの標準仕様に基づき、2019年4月には、米国および韓国でスマートフォン・サービスが開始され、我が国においてもNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、および楽天に電波の割当が為されている。

その後、今夏の東京オリンピック・パラリンピックにおけるサービスの提供など、我が国でも2020年から本格的に5Gサービスが普及するかのような報道があふれているが、変化は2021年以降、安定期は2020年代後半、完全自動運転は2030年には登場すると思われる6Gで初めて実現するという厳しい見方もある。2020年代は現行4Gとの並走期間となり、4Gの退場は、2030年までに及ぶというのが実際のところではないだろうか。

移動通信システムの変遷

規格 時期 方式 機器 サービス/速度
第1世代
1G
1979年~ アナログ ショルダーホーン
自動車電話
音声
第2世代
2G
1993年~ デジタル 携帯電話
PHS
メール
9.6~30kbps
第3世代
3G
2001年~ 世界共通
デジタル
携帯電話 写真
インターネット
384kbps~14mbps
第3.9世代
3.9G
2010年~ LTE
3Gの進化版
スマートフォン 音楽、ゲーム
動画
~100mbps
第4世代
4G
2015年~ LTE-Advanced スマートフォン SNS
高精細動画
~1Gbps

5Gによって何が変わるか

5Gは、4Gとの比較においては、高速・大容量、低遅延および多数同時接続という量的な違いではあるが、この量的な違いの程度が極めて大きいことによって質的な違いをもたらすものと言える。それは、距離の概念のパラダイム変換であり、消費者への対応から社会変革への対応であり、スマートフォン・ネットワークからスマート・ソサエティ・ネットワークへの変革と言うことができる。圧倒的な高速・大容量、低遅延および多数同時接続は、距離の概念を無くし、スマートフォン需要への対応に留まらずあらゆる機器のインターネット接続を可能にし、社会全体がデジタル・トランスフォーメーションの恩恵にあずかる状況を創出するものである。

第一の特徴である高速・大容量は、動画配信サービスにおいて顕著な影響をもたらす。大画面、高精細、マルチアングルを実現し、XR(仮想現実、拡張現実などの総称)、インタラクティビティをより高度化する。また、クラウドサービスによるノンインテリジェント端末に対するサービス提供が可能となり、スマートフォンのスペックに拘わらず同一サービスが提供されるようになる。

第二の特徴である低遅延は、コネクテッドカーにおいては、まず事故の未然防止、隊列走行を可能とし、最終的には完全自動運転を実現する。それらに伴い、走行実績情報に基づく自動車保険料金の設定なども一般化するかもしれない。医療分野においては、高精細テレビ電話による問診、画像情報共有による診察など遠隔医療が普及し、部位拡大映像、複数医師の連携、ロボット制御などによる遠隔手術を実現する。

第三の特徴である多数同時接続は、あらゆる設備、機器のIoT化を実現し、例えば工場においては、ロボット制御、ワイアレス接続、機器自体のスリム化などが一般化する。また、ドローンの高度利用を促進し、物流、設備点検、生態調査、報道、測量、農業、警備などでの活用が期待できる。

スーパーマーケットにおける5Gの活用

スーパーマーケットにおいては、現時点においては、5Gで初めて可能になるものとして特に挙げるべきものは見当たらない。スーパーマーケットにおけるICTを議論する場合において、動画配信サービスのような超高速・大容量は必ずしも必須ではない。また、コネクテッドカーあるいは医療分野のように、通信の遅延が致命的な問題となるケースは考えにくい。超多数同時接続についても、ローカル5Gを要するまでもなく、Wifiで対応可能であろう。

しかし乍ら、5Gによって世の中のIoT化が一層進展することによって、ICTに関わるコストが大幅に低減すれば、スーパーマーケットは間接的に大いに影響を受ける。例えば、店内設置カメラによる画像情報の利用については多数の設置を要するカメラのコストが導入のネックとなっているが、大幅なコストダウンが実現すれば異なった展開が可能である。

また、5Gが一般化した社会において、例えば、SCM(Supply Chain Management)の対象領域が消費者の冷蔵庫まで拡大されるようになった時には、スーパーマーケットにおけるICTも5Gとの関わりは避けて通れないものとなるだろう。

いずれにせよ、ICTはスーパーマーケットにおける重要な経営課題である。4Gでも実現できるものであっても、5Gによればより効率的になることは間違いない。以下に挙げるソリューションについては、5Gの普及を待つことなく、具体的な取り組みに着手する必要があると思われる。

インストア・プロモーション

インストア・プロモーションにおいては、スマートフォン、デジタル・サイネージ、電子棚札を挙げる。

スマートフォンは、商品・サービスのリコメンド、イベントの案内、電子クーポンの配布などOne to one Marketingの媒体として活用することができるが、より精緻な位置情報を利用すれば、顧客が店舗に近づいた時点あるいは店舗内を回遊している時点で、絶好のタイミングでコンテンツを配信することができる。

デジタル・サイネージは、店舗から買物客への一方向の情報提供である言わばPOPのデジタル化に留まらず、店舗と買物客の双方向の情報交換であるダイナミック・デジタル・サイネージとして適用することができる。ダイナミック・デジタル・サイネージは、不特定多数の買物客に対する情報ではなく、通過特定顧客向けに個別情報を提供し、更に提供情報に対する顧客の顔の表情などを解析することによって顧客の反応を感知するものである。

電子棚札は、値札の張替え負荷の軽減に留まらず、迅速な値替え実施に基づくダイナミック・プライシングを可能にする。また、スマートフォンと連動することによって、口コミ情報などを含む商品情報を買物客のスマートフォン上に配信することができる。更に、電子棚札を点滅させるなどして、デジタル・サイネージあるいは買物客のスマートフォンとの連動による商品陳列棚案内に利用することができる。

POS/チェックアウト・システム

POS/チェックアウト・システムにおいては、省力化と情報捕捉の拡充が挙げられる。省力化は、チェックアウトレスあるいは無人チェックアウトによって達成される。また、情報捕捉においては、従来、結果として購買に結び付いたものだけを捕捉することができたPOS情報が拡充され、買物客の買物行動全般を捉えることができるようになる。

チェックアウトレスあるいは無人チェックアウトにおいては、カメラかRFIDのいずれかによる買物商品の特定が趨勢である。チェックアウトレスでは、スマートフォンあるいは生体認証を含む個人認証が必要であり、無人チェックアウトではスキャン漏れ商品の廃絶が求められる。いずれの方式が主流になるにせよ、5GがもたらすIoT化の進展によって経済性は劇的に向上するものと思われる。

また、店内設置カメラによる画像情報の活用については、商品購買認識に留まらず、顧客行動の捕捉、即ち従来Webマーケティングだけで取得可能だった販促効果、商品を見た時の反応、手に取ったが購入しなかった商品などの多様なカスタマー・ジャーニ情報を獲得することができる。

ローコスト・オペレーション

ローコスト・オペレーションでは、商品補充発注および従業員の業務実態把握を挙げる。

店内設置カメラあるいは店頭棚在庫自動計測装置などの設置によって、棚陳列商品の在庫状況を把握することができる。自動警告による欠品商品補充、値引き判断、更には人工知能によって割り出された補充量に基づく自動発注への連動が考えられる。また、リアルタイムに正確な在庫が把握されることによって、棚調べ、棚卸が不要になり、当該業務の負荷軽減と発注精度の向上が図られる。

また、欠品商品補充には、ロボットによるバックヤードの商品在庫の取り出し、運搬および商品補充陳列が考えられる。ロボットが売場状況により走行が困難と判断した場合は、担当者のリストウオッチに当該情報を伝達することも可能である。

店内設置カメラは、LSP実績把握、業務別作業別実作業時間の自動計測、作業導線の自動記録などにも利用することができる。そして、作業別指標の適正化、業務手順の改善、人時生産性向上の為の施策に活用することが考えられる。

5Gの課題

利用者側から見た5Gは良いことばかりではない。5Gの課題として、セキュリティ、プライバシー、身体への影響が挙げられる。

IoTの広範な利用によって、これまでオフラインであったことによって無縁であった機器にサイバー攻撃のリスクが生じ、被害はこれまでとは比較にならない大きな規模となることが容易に想定される。セキュリティの確保はより一層重要な課題となる。

同様に情報量の拡大に伴って、意図しない場合も含めて個人情報の流出がより危惧される。発信者には動画投稿などにおいても個人情報を残さない配慮が必要であるが、一方、プライバシー情報の保護規制がより一層問われることになろう。

5Gは、4Gとの比較においても、被爆量が著しく増加すると言われている。日本の被爆量に関する基準は国際基準をクリアしていない。電磁波の身体への影響については、微量の電磁波で体調を崩す患者への対応が求められる。

以上

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