オピニオン

今、改めてスーパーマーケットのカテゴリーマネジメントを考える

投稿日:

§カテゴリーマネジメント概要
  まず、何故、カテゴリーマネジメントをテーマとして取り上げたかに触れておきたい。そして、カテゴリーマネジメントの概念とプロセスについてその概要を紹介する。

カテゴリーマネジメント
  カテゴリーマネジメントは、「消費者に価値を提供することに焦点を当てながら、経営効率を高めるために、カテゴリーをひとつの戦略事業単位(SBU)として捉え、小売業者とサプラヤーが共同してマネジメントしていくプロセス」と定義されている。「カテゴリー」とは、“消費者の視点で同一の売場に展開することが望ましい商品のくくり"である。言い換えれば、店舗オペレーション視点の部門管理あるいはサプライヤー視点の単品管理の対立概念として、消費者のニーズを満足するうえで、相関性や代替性があるとみなされる商品・サービスのグループである。

何故、今、カテゴリーマネジメントか
  カテゴリーマネジメントは、1980年代に米国で生まれた小売業のマーチャンダイジングにおけるマネジメント手法である。その後の発展はあるにせよ、一世代30年以上も前に提唱されたマネジメント手法を今改めて持ち出すことには違和感があるかもしれない。しかし乍ら、現在の我が国の小売業、とりわけスーパーマーケットにおいて、カテゴリーマネジメントは正しく認識されていないのではないかと思われる。そして、何より、カテゴリーマネジメントがカテゴリーキラーの台頭を背景として受け入れられて来たことを想起すると、改めて今カテゴリーマネジメントを見直すことの意味を見出さざるを得ない。
  現在のスーパーマーケットは、業態内競争から、それに加えてドラッグストア、コンビニエンスストア、インターネットショッピングなど他業態との競争に本格的に突入している。例えば、グロサリーへの価格訴求による浸出を進める現在の我が国のドラッグストアは、確かに業態間競争であることには違いないが、実質的には商品群間の競争であり、一世代前の米国のスーパーマーケットのペットケア部門を壊滅させたカテゴリーキラーを彷彿させる、本質的にはカテゴリー単位の競争と捉えることができる。

カテゴリーマネジメントのプロセス
  カテゴリーマネジメントは、売上、荒利益の拡大をもたらし、在庫と棚スペースの縮小に寄与したことが実証されている。さらに、財務面以外においても、何よりビジネスの実務面において消費者起点という思想を浸透させたことが挙げられている。こうしたカテゴリーマネジメントの効果を存分に発揮させるためには、カテゴリーマネジメントの以下に挙げる8つのビジネスプロセスを忠実に実行することが必要である。カテゴリーの定義からカテゴリー戦術までの6つのステップがカテゴリービジネスプランである。

◆カテゴリーの定義◆

◆カテゴリーの役割◆

◆カテゴリーアセスメント◆

◆カテゴリースコアカード◆

◆カテゴリー戦略◆

◆カテゴリー戦術◆

◆プランの実行◆

◆カテゴリーレビュー◆

カテゴリービジネスプラン
  カテゴリーマネジメントのビジネスプロセスのうちのカテゴリービジネスプランに相当する6つのステップは順次以下の通りである。

1.カテゴリーの定義
  カテゴリーに含まれる商品(サービス)を決定する。そして、買物客がどのような属性に基づいてそれを購買しているのかを表現する購買意思決定(CDT:Consumer Decision Tree)の優先順位を設定する。

2.カテゴリーの役割
  カテゴリーの位置づけ、相対的重要性を設定する。カテゴリーは平等ではない。従って、カテゴリーの役割の設定は、カテゴリーマネジャーの仕事ではなくトップマターである。一般的な役割の選択肢としては、以下が挙げられる。

① デスティネーション
同業態、異業態を含め一番店になるカテゴリー
② プリファード
同業態で一番店になるカテゴリー
③ ルーティーン
顧客が日常的に備蓄しておかなければならない需要を満たすカテゴリー
④ オケージョナル/シーズナル
季節、行事特化商品のカテゴリー
⑤ コンビニエンス
ついで買い商品のカテゴリー

3.カテゴリーアセスメント
  情報収集、情報分析、そして対策案の模索の3つのステップからなる。アセスメントは、カテゴリーだけでなく、ドリルダウンレベルであるサブカテゴリー、セグメント、ブランド、SKUレベルに落とし込んで実施することがポイントである。

4.カテゴリースコアカード
  カテゴリーの目標指標であるが、同時にカテゴリーマネジャーの評価基準でもある。顧客、市場、財務、生産性の4つの視点でバランスのとれたものである必要があり、既存の目標数値、予算数値あるいは評価基準などとの並立は避けなければならない。

5.カテゴリー戦略
  カテゴリーの役割とスコアカードの指標を達成するための方向性を設定する。商品と戦略を結びつけるプロセスであり、戦略と商品の相関関係を図式化した「ストラスグラム」を構築する。代表的なカテゴリー戦略としては、以下が挙げられる。

① 客数増大戦略(競合から顧客を奪い取る)
② 陣地防衛戦略(競合に顧客を奪われないようにする)
③ 客単価増大戦略(顧客当たりの売上増大)
④ 利益貢献戦略(顧客当たりの荒利増大)
⑤ 興奮増大戦略(楽しく買物をしてもらう)
⑥ イメージ向上戦略(一定のイメージを抱いてもらう)

6.カテゴリー戦術
  決定された戦略を実現するために日常的にとるべき行動である。マーケティング戦略の基本的な領域には、品揃え、棚割展開、価格設定および販売促進が挙げられる。戦術には、前述したCDT、ストラスグラムが織り込まれなくてはならない。

§カテゴリーマネジメントおけるカテゴリー
  次に、カテゴリーマネジメントのプロセスのうち、一般的なマーチャンダイジング手法を知っているだけでは理解しにくい「カテゴリーの定義」の手順を紹介する。

カテゴリーの定義
  カテゴリーの定義には、大きく分けて2つの作業がある。まず、消費者のニーズを意識して、商品(サービス)グループを考えること。即ち、対象カテゴリーで扱う商品やサービスには何が含まれ何が含まれないかを考えることである。2つ目の作業は、消費者がどういう優先順位や属性に基づいてそのカテゴリーの商品やサービスを買っているのか、カテゴリーの購買構造を考えることである。更に、当該CDTで代替購買レベルがどこにあるかを設定することである。

カテゴリーの定義の4つのステップ
  カテゴリーの定義の作業には4つのステップがある。第一のステップでは消費者がどういうニーズを持っているかを決定する。第二のステップでは、消費者のニーズを満足する商品やサービスがどういうものであるかを選択し決定する。どの商品やサービスを対象カテゴリーに取り込むかを決める。第三のステップでは、それらの商品やサービスを買う際の意思決定の優先順位を図式化したCDT(Consumer Decision Tree 消費者購買意思決定図)に表す。そして、最後の第四のステップは、代替購買をするレベルがCDTのどこにあるかを決定する。

ステップ1(消費者ニーズの決定)
  大括りのニーズテーマによってカテゴリーを編成し、個別のカテゴリーのより細分化されたニーズを洗い出し、重要度の順にリストアップする。そして、次にこれらのニーズを満足させる商品やサービスにはどのようなものがあるかを考える。そして、消費者にとって、そのカテゴリーのイメージに最も近い順に並べる。最後に、カテゴリーの役割から導かれるカテゴリーの位置づけに基づき、どこまでのニーズを当該カテゴリーでカバーするかを決定する。

ステップ2(商品グルーピングの決定)
  まず、カテゴリーのニーズを満足するすべての商品やサービスを考える。相互に関連する商品については、このカテゴリーの商品のグループに加える可能性を検討する。また、商品が代替可能であれば、削除する可能性を検討する。さらに、営業政策、許認可、物流などを含めオペレーション上取り扱い可能な商品・サービスかどうかを検討する。この様に、改めてあらゆる商品やサービスの取り扱いを検討した上で取捨選択して、残った商品やサービスがこのカテゴリーに属するべき商品である。

ステップ3(カテゴリー構造の決定)
  消費者が、そのカテゴリーの商品を買うとき、どの属性や優先順位に基づいてそのカテゴリーの商品やサービスを購買しているのかを考えることである。具体的には、CDT(Consumer Decision Tree:消費者購買意思決定図)を構築することである。
  属性としては、一般的に、最終使用者、製法/材料、フレーバー/レシピ、形状、最終使用場所、パッケージタイプ、サイズ、価格、ブランド、色、スタイル、使用機会、使用タイミングなどが挙げられている。優先順位は、優先される属性のことであり、カテゴリーによってそれぞれ異なる。最初の優先順位は通常サブカテゴリーと言い、以下セグメント、サブセグメントと呼ばれる。
  CDTのツリーの属性は、レベル毎に一致する必要はない。ひとつひとつの枝葉にひとつひとつ異なった属性があっても構わない。要は、消費者のニーズがどれだけ忠実に反映されているかである。

ステップ4(スイッチングとウオーキングレベルの決定)
  スイッチングレベルとウオーキングレベルが完成したCDTの中でどこにあるかを検討することである。スイッチングレベルとは、CDT内のレベルで消費者が欲しい商品やサービスが見つからない場合に代替商品やサービスを見つけ他の商品やサービスへ購買を切り替えることを指す。一方、ウオーキングレベルとは、CDT内のレベルで消費者のニーズが満たされないのでこのカテゴリーの商品やサービスを購買しないレベルを指す。ウオーキングレベルは、消費者は他店に流れ顧客を失うことを意味する。
  これらのレベルがCDT内のどこにあるかを知ることは非常に重要である。スイッチングレベルとウオーキングレベルは、枝葉毎に異なることがありうる。ある場合はセグメントレベルがスイッチングレベルであっても、別の枝葉ではサブセグメントレベルがウオーキングレベルであることを知り、枝葉毎にそれらを見極める必要がある。

§カテゴリーマネジメント導入の留意点
  最後に、組織的にはカテゴリーマネジメントを未だ導入していないスーパーマーケットがカテゴリーマネジメントを導入する際の留意点について触れておきたい。

カテゴリーマネジメントの正しい理解
  カテゴリーマネジメントについての小売業者の認識は様々である。商品分類表の中分類あたりを「カテゴリー」と名付けて既にカテゴリーマネジメントを導入していると錯覚している場合もあれば、商品分類を超えた同時購買商品を棚割に加えるだけでマインドだけのカテゴリーマネジメントに陥っている場合もある。
  カテゴリーマネジメントによるマーチャンダイジング手法の変革に当たっては、まず「カテゴリー」の正しい理解が必要であり、カテゴリーマネジメントのプロセスの忠実な実行が必須である。

カテゴリーマネジメントの全体像
  順序が逆になるが、カテゴリーマネジメントの前提として、言うまでもなく、カテゴリーマネジメントのビジネスプロセスの1ステップとしての戦略ではなく企業の戦略がある。そして、対外的にはサプライヤーとの協調関係と企業内においてはビジネスプロセスを承認し、推進支援する組織が前提となる。カテゴリーマネジメントのビジネスプロセスの1ステップとしてのスコアカードは組織として認知されていなければカテゴリーマネジメントは絵にかいた餅になってしまう。更に、今日において、カテゴリーマネジメントプロセスを推進していく為には、ICTによるシステム支援が必須である。
  このように、カテゴリーマネジメントの全体像を俯瞰すると、戦略、サプライヤー、組織、ICTとのリンケージが必要であり、採用に当たってはトップの意思決定が極めて重要であることがわかる。

カテゴリーマネジメント導入の類型
  カテゴリーマネジメントの導入は、極めて大規模な業務改革であると言える。だからと言って、ビジネスプロセスの部分導入は、本音と建前の乖離が生じ、カテゴリーマネジメントの恩恵を損なうか、場合によっては業績の悪化をもたらす可能性をも秘めている。一方、欧米においても多くの事例があるという、商品・サービス群としての部分導入であれば問題はない。
  業態内のみならず業態を超えたカテゴリーキラーとの競争において、我が国のスーパーマーケットの中核商品である生鮮食品を含むいくつかのカテゴリーを設定してカテゴリーマネジメントを導入し、その成果を見て全社的な導入を図ることが現実的であり、また、今取り組むべきことではないかと思われる。

以上

-オピニオン

Copyright© リテイル総研 , 2019 All Rights Reserved Powered by STINGER.