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スーパーマーケットにおけるLSPシステム

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LSP(Labor Scheduling Program)
  LSPとは達成したい生産性目標を掲げ、それを実現するために必要な作業手順と時間を設定し、誰が、いつ、何を、どのくらいの時間で行うかを計画し管理するものである。内在的には、必要/契約/計画/実績の4つの人時を掴み、必要と契約、契約と計画、さらに計画と実績の各人時をそれぞれ一致させる活動を実施することである。そして、外形的には、従業員の日々の勤務シフトと時間帯別従事業務を設定する勤務編成表を簡単に作成することである。

LSP導入の背景
  人手不足と働き方改革によって人件費の高騰は今後共避けられない状況にある。少子高齢化は留まるところを知らず、同一労働同一賃金が励行されればパートタイマーの時給は現行の1.66倍に及ぶ。
  競争の激化による荒利の低下と経費の大半を占める人件費の高騰に対して営業利益を確保するためには、労働生産性を高めていくことが急務である。労働生産性を高める為には、要員に業務を与えるのではなく業務に要員を貼り付けると言う考え方で、業務の質と量に見合った適切な要員を投入する必要がある。
  しかし乍ら多大な負荷をかけて作成したスケジュールに対して、労働生産性の確保と言う重要課題に見合った取り組みがなされていないのが現状であろう。

LSP導入の目的
  LSPの目的の第一は、労働生産性の向上にある。第二の目的である勤務シフト編成表の作成はそれ自体が目的でもあるが、単に編成表作成ツールとしてではなく本来の目的を忘れてはならない。第二は、勤務シフト編成表の作成負荷の軽減である。短時間に、偏りを排除した、無駄のない、不公平感を払拭した、適正な要員配置を実現することである。
  そして、第一の目的を達成するためには、業務環境の改善あるいは業務の改革の具体策を見出すことである。業務それ自体だけではなく、業務をより効率的に遂行できるようにする為のローコスト・オペレーションに向けた仕組み作りを進めて行かなければならない。

LSP導入のステップ
  LSP導入の第一ステップは、達成したい目標を設定することである。そして、その目標は人時生産性として表し、同時に店舗の評価指標を人時生産性に絞らなくてはならない。第二のステップは、各業務の定義の明確化と業務の洗い直しである。第三のステップは、第二ステップに基づく、各業務の作業手順と時間の設定、即ち作業指示書の作成である。そして、第四のステップで初めてLSPシステムによる要員割当を行う。第五のステップ、即ち最終ステップは、実績に基づく契約と計画の見直しである。
  これらを形骸化させずに進めるためは、LSPの導入をトップダウンで推進するということに加えて、本部は店舗のサポーターであることを再認識することが極めて重要である。

定義の明確化と業務の洗い直し
  定義の明確化と業務の洗い直しとは、言い換えれば業務名称と業務内容の再定義である。業務名称と業務内容は、企業として統一したものでなければならない。本部と店舗、店舗間(あるいは事業会社間)で同一名称の業務が異なったものであっては、適切なマネジメントは期待できない。
  すべての業務に対して、儲かるための作業か利益をもたらさない作業かの厳密な精査に基づき業務を見直す必要がある。そして、業務の存在自体を、「止める」、「移管する」、「頻度を下げる」といった視点から洗い直さなくてはならない。また、業務それ自体だけではなく、その環境を変えることによって、業務内容を変えることを意識する必要がある。

【業務見直しの例】
<業務自体>
◆作業時間帯の見直し
◆作業頻度の見直し
◆自動化

<業務環境>
◆売場レイアウト、什器の見直し
◆チラシによる特売の採算性精査
◆セントラル・キッチンへの部分移管

各業務の作業手順と時間の設定
  各業務の作業手順と時間の設定とは、即ち作業指示書の作成である。作業指示書作成のポイントは、どのような作業の流れで業務を行っているか、作業に手間がかかるのはどうしてか、人によって何故やり方が違うのか、意味のない習慣的作業はないか、過剰な顧客サービスに陥っていないか、といった点を厳密に精査することである。
  売上あるいは客数に比例して業務量が増える可変業務とそれらに拘わらない固定業務の分別、前者については可変要素の数値(RE値:リーズナブル・エクスペクタンシー)の設定、後者については所要工数(人数×時間)の設定であるが、いずれのケースについても第三者による業務量の測定を前提にすることが必須である。

LSPシステムによる要員割当
  LSPシステムにおいては、繰り返しになるが、要員に業務を設定するのではなく、業務にその業務の処理スキルを持つ要員を張り付ける仕組みが必要である。
  要員に対する業務割当は、要員の複数業務対応能力が前提となるが、部門間応援を駆使して雇用契約と業務計画の乖離を最小化し、自動設定後の需給バランスを自動的に記録する機能を要する。また、自動設定の要員不足の補填には、時間外勤務の発生しない管理職は時間外の業務に従事しないようにすることが的確な人時生産性を管理する為には必要である。
  LSPシステムには、勤務シフト編成表の作成負荷の軽減のために、以下の機能が必要である。

【LSPシステムの必要機能】
◆必要要員算出(以下の設定数値に基づく)
予算、基準数値(客単価、時間帯別構成比等)、RE値、業務別所要工数
◆申請承認ワークフロー
年次休暇、特定日勤務、時間外勤務
◆ワークスケジュール自動作成
設定優先順位、勤務時間、スキル、人時生産性シミュレーション
◆ワークスケジュール補正
要員追加/削除、シフト変更、業務変更
◆エラー警告
業務別時間帯別要員別配置を満たしているか
休憩時間が確保されているか
公休が確保されているか、
労働時間が守られているか、
厚生年金(配偶者控除)対象区分が本人の希望に合致しているか
◆勤務編成表出力
日別要員別月間勤務、要員別時間帯別業務、チェックアウトレーン別時間帯別要員

実績に基づく契約と計画の見直し
  まず、自動設定後の需給バランスがあったらパートタイマーの雇用を見直す必要がある。週当たりの最小勤務日数、一日あたりの最小勤務時間数などの雇用条件も必要に応じて見直さなければならない。また、本来業務の逼迫していない時間帯の雇用、あるいは逆に繁忙時間帯に雇用が不足している状況に対して、適正な雇用が困難な場合は、業務の実施時間帯を再検討しなければならない。
  次に、業務実績が計画通りに行われたかどうかを精査する。業務実績を精密に捉えることは実務上簡単ではない。スマートフォンなど携帯端末で都度開始時刻と終了時刻を入力する、あるいはカメラ映像によって作業実績を捉えるなど技術的には可能であるが、当面そこまでの対応は得策ではない。計画に対して著しく実績が乖離している業務に対しては、一定期間経過後に初期手順を繰り返すことによって、業務内容あるいは生産性指標(RE値)のいずれかの見直しを行わなくてはならない。
  更に、時間帯別業務の計画に沿った実施に支障を与えるような事象に対しては、目的として前述したように、適切な対策を講じていく必要があり、人時生産性が未達の場合は、業務自体と業務環境双方の見直しをする必要がある。

以上

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