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ス-パーマーケットにおける自動発注システム

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発注システムの要諦

発注行為の要諦は、発注により手当された商品の売れ残りと欠品を限りなくゼロに近づけることにある。売れ残りは値引きあるいは廃棄ロスに繋がるばかりでなく、それに伴う業務の発生により著しく生産性を損なうからであり、欠品は売上の機会損失であるばかりでなく、場合によっては同業他社あるいは異業態他社への顧客の流失に繋がりかねないからである。

また、しくみとしての発注、即ち発注システムにおいては、加えて、できる限り発注者の能力のみに依存せずに、短時間で処理できることが求められる。尚、本来「発注」とは、新規発注と補充発注の双方を含む概念であるが、ここで触れる発注システムについては、一応、補充発注を指すものとして話を進めたい。

適正発注量は一般的には次の算式で表すことができる。

適正発注=適正在庫+販売予測-(在庫+発注済未納品)

「発注済未納品」については、取引先の欠品あるいは納期遅延などによって確定されない場合があったとしても、本稿での論点ではないので省くとする。「在庫」については、商品廃棄等の未入力あるいは万引き等の在庫不在があるので、棚調べ時点での発注専用端末による発注によって、発注単位(SKU)に正確に把握されているものとする。残るは言うまでもなく販売予測の適否にある。

需要予測の要素

適正発注量の設定には、「セルワンバイワン」、即ち、ほぼ恒常的な適正在庫を設定し、販売できた分だけあるいは在庫が減った分だけ発注するという原始的な手法があるが、ある範囲のコモディティ商品、即ち、対象品目の売れ行きが安定していて、且つ新製品が出てくる見込みが少ないかあっても後継商品、に適用されることはあっても、それらを除くアイテムに関しては、競争に耐えられる策ではない。従って、POSデータ、天候・気温・湿度、販促、同一商圏内他店の販促、商圏内の行事・イベント、社会的事象などの要素を分析し適切な発注量を求めることが要請される。

POSデータ

実績としてのPOSデータは、需要予測における基本データである。それ以外に挙げた要素は、実績としてのPOSデータが如何なる状況において発生したかを知る為の材料であり、同時に未来日の要素は未来日の需要予測を導き出す為のための判断材料である。従って、未来日の需要予測には、1店だけのPOSデータでは一部の客のイレギュラーな買物で判断が狂うので、企業内の類似商圏を持つ複数店舗のデータが必要である。

天候、気温、湿度

一般的にはPOSデータには含まれない天候(降雨量、降雪量、風速なども含む)、気温、湿度データは、アイスクリーム/氷菓子販売量の相関が実証されている通り、言うまでもなく売上を左右する重要な要素である。

販促

販促が実績売上にどのような効果を与えたかはそれ自体大きな分析課題であるが、需要予測に結び付けるためには販促売上予算の内訳としてアイテム別売上数量を捉えなければならない。

同一商圏内他店の販促

需要予測においては情報収集に限界があるものの、実績売上に対しては、自店の販促のみならず同一商圏内他店の販促によってどのような影響がもたらされたかを分析する必要がある。

商圏内のイベント、行事

正月、GW、お盆などの国民的行事などは勿論、商圏内の企業、学校などの感謝祭、運動会などのイベントなども消費に影響を与える。また、地方独特の伝統的行事には当該行事向けの期間限定の品揃えが求められる。

社会的事象

地震、津波などを含む自然災害や、火災、凶悪犯罪などの社会的事件の消費に与える影響は大きい。発生後の需要予測は言うまでもないが、過去の実績の分析において発生情報の反映は欠かせない。

自動発注システムへのアプローチ

今日のICT環境を考えれば、これらの適正発注量に影響を与える要素を、例え業務に精通していたとしても、個人の能力のみに委ねることは得策ではない。これらの要素をビッグデータとして収集し、AIによる解析によって需要との相関を見つけ出し、需要予測のアルゴリズムを確立していくことが最適な手法であると思われる。

AIによる需要予測は、現在において比較的容易な音声認識あるいは画像認識と比べて、ディープラーニングの領域に属する極めて難易度が高い分野であり一朝一夕に完成し得るものではない。従って、発注者は、当面は、棚調べによって実在庫を把握し、AIによる販売予測を参照しながら経験値に基づく修正を加味して発注量を決定する必要がある。そして、その結果を実績データとして取り込み、PDCAサイクルの繰り返しによってAIの精度を高めていくことが必要であろう。

AIによる自動発注の薦め

また、ビッグデータを構成するデータ自体もICTの進展によって変貌していくだろう。アマゾン・ゴーに代表されるチェックアウトレス・システムでは、購入商品の捕捉の副産物として購入を検討したが購入に至らなかった、一度は手に取ったが棚に戻された商品、を捉えることができる。更に、商品やそれをリコメンドするデジタル・サイネージに向けられた顧客の表情から顧客の購買心理を探ることができるとういう技術の実現ももう目の前まで来ている。これらは、需要予測の前提としての、POSデータとその意味付けと言う限界を打ち破るものである。

いずれにしても、適正在庫の実現と言う実店舗にとって避けては通れない最重要課題に対して、少なくとも遅れを取らない為には、AIによる自動補充発注システムへの早急な取り組みが求められる。

以上

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